
2026.7.16に公開
実験室で設置する局所排気装置とは?
必要な理由や選び方を解説
科学実験や研究開発の現場では、人体に有害なガスや粉塵を扱う機会が少なくありません。こうした有害物質から研究者の安全を守り、クリーンな実験室環境を維持するために欠かせないのが「局所排気装置」です。
本記事では、局所排気装置の基礎知識から失敗しない選び方、さらには設置工事が難しい場合の代替案として注目される「発散防止抑制装置」まで解説します。安全で信頼性の高い研究環境を整えるために、まずは全体のポイントを確認していきましょう。
実験室でよく使われるドラフトチャンバー(局所排気装置)とは?

科学実験において、有機溶剤や特定化学物質など、人体に有害な物質を取り扱う際に使用されるのが「ドラフトチャンバー」です。別名「ヒュームフード」とも呼ばれ、有害物質の多量揮発や飛散から研究者の安全を確保する役割を担います。
作業エリア内を常に「陰圧」の状態に保つことで、有害物質を含む空気が作業者側に漏れ出すのを防ぐ仕組みになっています。研究者の健康被害のリスクを抑え、安全に実験を継続するために、実験室において欠かせない設備の一つです。
他にもある局所排気装置の種類
局所排気装置は、捕集方法によって主に以下の3つに分類されます。
- 囲い式:作業環境を囲い込み、有害物質の流出を防ぐ形式
- 外付け式:発生源の近くに吸込口を設置し、周辺の空気と一緒に吸引する形式
- レシーバー式:物質が飛散する勢いを利用し、その流れを受け止める形式
ドラフトチャンバーは「囲い式」に該当します。作業環境を囲うためスペースは制限されますが、少ない排気風量で高い安全性を保てるのが特徴です。
また、毒ガス等を扱う非接触作業が必要な場合には、より密閉された囲い式のグローブボックスが使用されます。
実験室で局所排気装置が必要な理由
実験室では、有機溶剤や特定化学物質など、取り扱い注意な薬剤が日常的に使用されています。これらの物質が揮発・飛散すると、実験を行う作業者の健康を害するだけでなく、環境への悪影響も懸念されます。
局所排気装置は、こうしたリスクを発生源でコントロールし、安全な研究環境を維持するために不可欠な設備です。ここでは、なぜ導入が必要なのか、その主な理由を「作業者の保護」と「外気汚染の防止」の2つの観点から解説します。
有害物質からの作業者の保護
実験室で局所排気装置が必要な理由は、実験を行う作業者が有害物質を吸入するリスクを低減するためです。有機溶剤、酸・アルカリ、微細な粉塵などは、実験中に揮発・飛散しやすく、これらを吸い続けると急性中毒や慢性的な健康障害を引き起こす可能性があります。
局所排気装置は、発生した有害物質を作業者の呼吸域(口や鼻)に届く前に素早く吸い取ります。目に見えない危険から作業者を守り、安全に業務を続けるために必要な装置なのです。
外気汚染の防止
もう一つの目的は、汚れた空気をそのまま外へ出さないことです。実験室から有害なガスをそのまま排出すると、周りの空気を汚したり、悪臭による近隣トラブルを招いたりしてしまいます。
そのため、局所排気装置にはフィルターや洗浄装置を取り付け、有害物質を取り除いてから空気を外へ逃がす仕組みが備わっています。適切に処理することで、地域の環境を守りながら、法律や条例を遵守したクリーンな運営が可能となるのです。
実験室に設置する局所排気装置(ドラフトチャンバー)を選ぶポイント
ドラフトチャンバーは、実験者の健康を守る重要な設備です。しかし、カタログには多くの種類が並んでおり、「どれを選べばいいかわからない」と迷ってしまうことも少なくありません。
ここでは、長く安全に使い続けるために必ずチェックしておきたい、3つの選定ポイントを解説します。
実験内容にあった材質や排気風量の制御方式を選ぶ
まずは「どんな薬品を使うか」を整理しましょう。例えば、シンナーなどの有機溶剤を使うならステンレス製、金属を溶かすような酸性の薬品を使うなら、錆びない塩化ビニル製など、薬品によって適した材質が異なります。材質選びを間違えると、すぐにボロボロになってしまいます。
また、風の吸い込み方も重要です。バーナーなどで熱を使う実験では、風の強さが変わらない「一定風量タイプ」が安全です。
一方、電気代を節約したい場合は、状況に合わせて風量を自動調整するタイプもあります。実験の中身に合わせて、装置の「材質」と「排気方法」を選ぶことが大切です。
作業スペースにあった形状のものを選ぶ
次に、実験室の広さと、中に入れる機材の大きさに合わせて「形」を決めます。
- 卓上タイプ:今ある実験台の上に置けるコンパクトなもの
- 床置きタイプ:十分な作業スペースがある標準的なもの
- ウォークインタイプ:背の高い大型の実験装置をそのまま入れられるもの
ただし、エアコンの風が直接当たる場所などは、性能が落ちるため設置に向きません。また、ダクト(排気管)工事ができない部屋では、フィルターでろ過する「ダクトレス(発散防止抑制装置)」という選択肢もあります。
局所排気装置(ドラフトチャンバー)を選ぶ際は、部屋の環境と使い勝手のバランスを見ることが重要です。
搬入経路を確保できるか確認する
意外と見落としがちなのが、「実験室まで運べるか」という点です。ドラフトチャンバーの機種によっては大型の家具や冷蔵庫よりも大きいため、部屋のドア、廊下の曲がり角、エレベーターに入らないことがあります。
もし搬入できなければ、クレーン車を使って窓から入れることになり、追加で高額な費用がかかってしまいます。もし通り道が狭い場合は、部品の状態で運び込んで、部屋の中で組み立てるタイプを選ばなければなりません。
買ってから「入らない!」と慌てないよう、事前のルート確認は必須です。
ドラフトチャンバー(局所排気装置)の性能を損なわないための対策
ドラフトチャンバーは、気流を制御して有害物質の流出を防ぐ装置です。そのため、エアコンの風や人の通行、窓からの吹き込みといった「外乱」が性能を大きく低下させる原因になります。
設置場所はこれらを避けるのが理想ですが、難しい場合は運用での対策が重要です。「使用中は近くの空調を調整する」「作業者の背後を通行禁止にする」「不要なサッシの開閉を控え、可能な限り閉めて使用する」などを徹底しましょう。
外部の風の影響を最小限に抑え、安定した気流を保つことが安全確保の鉄則です。建物の構造上、ドラフトチャンバー(局所排気装置)を設置するのが難しい場合は、次に説明する「発散防止抑制装置」を推奨します。
局所排気装置以外では発散防止抑制装置もおすすめ
有機溶剤や特定化学物質を扱う現場では、原則として局所排気装置などの設置が義務付けられています。しかし、テナントビルの構造上ダクトを通せなかったり、賃貸契約で壁に穴を開けられなかったりと、物理的な制約で断念せざるを得ないケースも少なくありません。
そこで注目されているのが、法令に基づく代替措置である「発散防止抑制装置」です。所轄の労働基準監督署から特例許可を得ることで、局所排気装置と同等の安全対策として導入が可能になります。
ここでは、発散防止抑制装置の概要と実験室に導入をおすすめする理由を解説します。
発散防止抑制装置とは?
発散防止抑制装置とは、有機溶剤を吸着して分解し、濃度を下げる装置のことです。有機則や特化則で定められた局所排気装置の設置が困難な場合に、その代替措置として労働基準監督署から許可を受けて設置できます。
一般的には「ダクトレスヒュームフード」などがこれに該当します。特徴は、ダクトを使わず、内蔵された高性能フィルターで有害物質を吸着・除去し、きれいな空気を室内に循環させる点です。
導入には「フィルターが2層以上あること」や「センサー等は管理濃度の1/10以下を検出する性能を有すること」など、国の定める審議基準をクリアする必要があります。しかし、許可されれば、局所排気装置よりも省エネ性の向上とランニングコストの削減が期待できます。
発散防止抑制装置が実験室におすすめな理由
発散防止抑制装置の大きなメリットは「ダクト工事が不要」な点です。屋上への配管工事がいらないため、初期費用(イニシャルコスト)を大幅に抑えられ、配管スペースのないテナントや、壁に穴を開けられない部屋でも導入可能です。
また、「省エネ効果」も期待できます。従来の装置は汚染空気と共に空調された空気も屋外へ捨てていましたが、この装置はろ過した空気を室内へ戻す循環式のため、室温への影響がほとんどありません。
空調負荷を減らし、ランニングコストの削減にも大きく寄与します。
よくある質問(FAQ)
局所排気装置の導入や管理において、設置場所や仕組み、用語の違いなど、よくある疑問をQ&A形式でまとめました。ここで基礎的なポイントを整理し、自社の環境に合った適切な運用にお役立てください。
局所排気装置はどこに設置されていますか?
有機溶剤や特定化学物質、粉塵などが発生する工場や研究所、学校の実験室などに設置されます。具体的には、塗装作業、溶接、化学分析を行う現場など、法令で定められた有害業務を行う作業場には設置義務があります。
汚染物質が室内に広がるのを防ぐため、発生源の直近に設置するのが原則です。
局所排気装置の仕組みは?
仕組みは家庭の掃除機に似ています。発生源の近くにある「フード」から有害物質を吸い込み、「ダクト」という管を通して搬送します。
その後、「空気清浄装置」でガスや粉塵を取り除いて浄化し、「ファン」の力で屋外へ排出する仕組みです。汚れた空気を人が吸わないよう、発生元で捕集して処理するシステムです。
局所排気装置とドラフトチャンバーの違いは?
「局所排気装置」はシステム全体の総称であり、その中の一つの種類が「ドラフトチャンバー」です。局所排気装置には「囲い式」や「外付け式」などがありますが、ドラフトチャンバーは箱の中で作業する「囲い式」に該当します。
つまり、車で言う「自動車(総称)」と「セダン(車種)」のような関係です。
発散防止抑制装置導入なら株式会社ベリクリーンにお任せください!
実験室での安全確保には、適切な局所排気装置の選定と運用が不可欠です。ドラフトチャンバーは作業者の健康と環境を守る装置ですが、材質選びや搬入経路の確認など、導入前のチェックポイントは多岐にわたります。
建物の構造上、局所排気装置の設置が難しい場合は「発散防止抑制装置」という代替手段があります。法令順守と省エネを両立するクリーンな環境づくりのために、現場の状況に合わせた最適な設備を選びましょう。
もし導入や申請でお困りの際は、豊富なノウハウを持つ株式会社ベリクリーンへご相談ください。安心安全な職場環境づくりを全力でサポートいたします。
